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[2019年5月24日(金曜日)/理事・今野 浩一郎]

育成を前提とした採用が求める採用力

わが国における若者の採用は、新規学卒採用が中心です。この採用方法は、入社後に一人前の職業人に育成するという暗黙の契約を組み込んだ「育成前提の採用」です。このしくみこそ、日本型人事管理のコアであり、年功賃金、終身雇用などは、これを前提に形成されています。

 

現在、就活ルールの見直しが注目されていますが、単に年間を通して新規学卒者の採用活動が行われるようになるだけなら、入社後に社内で育成するという人事管理のコアに変化はないでしょう。
しかし、そうではなく、年間を通して「若い経験者」を採用することを、通年採用と定義するのであれば、いまの中途採用と同じ基準と視点で若者の採用を行わなければなりません。

 

国際的に見て、若者の失業率が極めて低いという現状を考えると、我が国の「育成前提の採用」は、これからも維持すべきだと考えます。しかし、いまの採用ルールが変わる必要がないとも考えていません。

 

なぜなら、組織が拡大する中で、社員が新しい仕事に挑戦し、能力を伸ばすチャンスを得ることが容易であった時代と異なり、現代の多くの企業では、社員にキャリアを形成する機会を長期にわたって提供することが難しくなっているからです。

 

こうした現状にあるにもかかわらず、従来型の採用方法を維持するとなれば、若者は将来のキャリアに失望し、企業は不満を抱えた多くの社員を十分に活用できなくなるでしょう。その結果、社会的に人材の最適配置が阻害されるという問題が深刻化していくと考えられます。

 

つまり、いまの日本企業に求められているのは、経営の方向に合う若者を的確に採用し、「育成前提の採用」のレベルアップをはかることです。

 

企業の採用力アップを求める背景に、このような日本型人事管理の将来を左右する深刻な問題のあることを、理解してほしいと思います。

 

出典:『「最高の人材」が入社する 採用の絶対ルール』(釘崎清秀・伊達洋駆/ナツメ社刊/四六判/264ページ/定価:本体1300円+税)

 

今野 浩一郎

今野 浩一郎

神奈川大学、東京学芸大学を経て学習院大学教授。現、学習院大学名誉教授、学習院さくらアカデミー長

東京工業大学大学院理工学研究科(経営工学専攻)修士修了。著書には『マネジメントテキスト―人事管理入門』(日本経済新聞出版社)『正社員消滅時代の人事改革』(日本経済新聞出版社)、『高齢社員の人事管理』(中央経済社)等がある。

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