理事コラム
[2022年6月7日(火曜日)/理事・釘崎 清秀]
なぜ、私たちは「採用力検定」を始めたのか
採用が持つ社会的意義と違和感(≒気持ちの悪さ)
私(当協会発起人であり代表理事の釘崎)が初めて採用の仕事に携わったのは22歳のころ(1983年初頭)からです。当時私はまだ大学生でしたが、日本リクルートセンター(現在のリクルート)で新卒向け就職情報誌の営業として働いていました。大学にはまったく行かず、営業先の企業には自分が学生だということをひた隠しにしながら、似非サラリーマンの活動に汗を流す毎日でした。
私が働いていたのは(卒論で大学に戻らざるを得なくなるまでの)1年足らずの期間だったのですが、採用という仕事の社会的意義に触れ、大いに意気に感じたものです。しかしその一方で、企業が行う「採用活動」と学生が取り組む「就職活動」には少なからず違和感(≒気持ちの悪さ)を持ったのも事実でした。
この違和感は、その後ベンチャー企業でSE兼採用担当者になってからも、適性検査や人事情報システム開発者になってからも、ずっと私につきまとっていました。そして国内老舗の就職サイトを立ち上げたとき、この違和感はついに頂点に達し、勢いでサラリーマンを辞めて独立(パフという採用支援会社を創業)してしまいます。いまから25年前(1997年)のことでした。
私が22歳の頃から持ち続けていた違和感の正体。それは企業の採用活動の「社会的好ましさの欠如」でした。たとえば、行き過ぎた広告で求職者を釣ってみたり、若者をウツ状態に追い込むような選考をやってみたり、希望に燃えて入社した若者を(採用時の説明とはまったく異なる)職場や雇用環境に置いてみたり……。求職者は求職者で(新卒者の場合)、企業の大きさやブランドにすり寄るような就職活動を行ったり、中小企業や不人気(と呼ばれている)業界の実際の姿を見ようとも聞こうともしなかったり(それら企業や業界をなかば侮蔑するような発言をしたり)といったことも、この違和感を増幅させるものでした。
日本採用力検定協会が掲げる「採用力」とは
一般社団法人日本採用力検定協会の設立(法人としての登記)は2017年。パフ創業から20年も経った後です。私が尊敬・信頼する識者の方々とともに、理想の(少なくとも違和感を持たずに済む)採用を追求する団体として発足する運びとなったのでした。
当協会では、「自社のみならず社会的にも好ましい採用を行うことこそが企業が果たすべき社会的責任であり、必ずやそのことが自社の採用を成功に導く」という考え方を広く発信していきたいと考えており、その手段のひとつとして「採用力検定」を運営することに決めたのでした。
当協会の掲げる「採用力」の大事な構成要素のひとつが「社会最適」という視座です。「姿勢」に下支えされながら身につけた「知識」や「技能」を、企業最適や社会最適という「視座」に立脚した採用活動=「行動」に結び付けていく、という全体構造です。
※私たちが定義する採用力の全体構造(構成要素)を載せておきます。
日本採用力検定協会は一営利企業では難しいことを可能にする
私が創業したパフでも、もちろん「理想の採用」を追求すべく事業活動を行ってきましたし、私が社長を退任した今でもその理念は引き継がれています。しかしながら(一営利企業に過ぎない)パフが社会に与えられる影響力は極めて乏しく、「独りよがりのキレイごと」にしか受け取ってもらえないことも多い、というジレンマを抱えています。
しかし5年前に発足した当協会は営利を追求するための団体ではありません(恥ずかしながら利益はまったく出せていません)。検定試験の受験料だけでは不足する運営経費は、同じ志を持ったHR事業者の皆様からの賛助金で賄っています。このHR事業者の皆様には「賛助会員企業」としてご参画いただき、「採用力」の考え方を多くの企業に浸透させるための活動にも取り組んでいただいています。
また「当協会の理事」には民間の識者だけでなく、経営や人事や雇用問題を社会的かつ学問的な見地から長年研究している大学の先生方も着任しています。余談ですが、理事陣は全員とも一切の報酬を受け取らず、検定問題の作成を始めとした当協会の根幹を為す仕事に取り組んでいます。
当協会は、一営利企業だけでは難しいこと(理想の採用を追求し広めること)を「垣根を越えて集まった多くの仲間たち」で可能にすべく努力しています。一人でも多くの経営者や人事・採用に携わる皆様に、そんな当協会の考える「採用力」やその裏側にある「理想の採用に対する想い」をご理解いただくこと、そして真の採用成功を自社に導くための一助として「採用力検定」をご活用いただくことが、日本採用力検定協会代表理事としての私の至上の喜びであります。
釘崎 清秀
株式会社パフ 代表取締役会長
株式会社パフ 代表取締役会長。明治学院大学経済学部卒業。大学在籍時よりリクルート(現リクルートキャリア)にて就職情報誌の営業に携わる。その後コンピュータ業界に転じ、各種システム等の企画開発に携わり、1995年には国内老舗の就職サイトを立ち上げ1997年に採用支援会社である株式会社パフを設立。一般社団法人履修履歴活用コンソーシアム代表理事も兼務。著書に「キミは就職できるか?」(彩図者)、『「最高の人材」が入社する 採用の絶対ルール』(ナツメ社、伊達洋駆氏との共著)など。